犬の食物アレルギーとドッグフード選び

要約
  • 食事の後に口のまわりをかゆがるのが犬の食物アレルギー症状の特徴
  • 母犬が食べていたフード、離乳後に食べたフードに原因ありの可能性が高い
  • 食物アレルギーの犬は以外に少ない。血液検査の過信は禁物!
  • アレルギーに強くなる食生活のポイントは水分・消化性・腸内環境

食物アレルギーとドッグフードの関係

愛犬がかゆがる姿を見るのはとてもかわいそうで、飼い主さんもつらいですよね。人間同様に、近年アレルギーの犬が増えてきていると言われています。このアレルギーのメカニズムはヒトも犬も同じ。「免疫」という本来は体を守るためのシステムが過剰に働いて逆に体を傷つけてしまうのがアレルギーです。中でも「食物アレルギー」というのは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲン(アレルギーの原因物質)となってアレルギー症状を引き起こすもの。かゆがったり、湿疹が出たりするなどの皮膚症状が最もよく見られます。犬の食物アレルギーは、多くの場合食後すぐに(30分以内)特に口の周りを中心とした顔や耳を痒がるような様子が見られるのが特徴的。そんな症状が出たら食物アレルギーを疑っていいかもしれません。

何が食物アレルギーの原因物質になるかは犬によってさまざまですが、基本的には消化機能や腸管のバリアがまだ未発達の仔犬の時期に、母犬が食べていたドッグフードの原材料に含まれるタンパク質(母乳を通して仔犬が摂取する)や、離乳後に食べはじめたドッグフードの原材料がアレルゲンとなりやすいと言われています。このため、食物アレルギーは比較的低年齢の時期(1歳未満)に発症する場合が多いようです。

犬の食物アレルギーで多いとされるアレルゲンの代表は牛肉、乳製品、鶏肉、小麦など。昔からドッグフードによく使われている原材料ですね。一時期、羊肉と米が主原料の「ラム&ライス」が低アレルギードッグフードとして人気だった時代がありましたが、その後羊肉や米に対するアレルギーが増えたと言われています。つまり、ある食べ物を食べる犬の頭数が多ければ多いほどアレルゲンになる確率も高まるということですので、上に挙げた「牛肉、乳製品、鶏肉、小麦」が元々アレルギーになりやすい食べ物ということではありません。どんな食べ物でもアレルゲンになる可能性はあります。

知っておきたい犬の食物アレルギー検査

愛犬がアレルギー症状を発症した場合、その原因は食べ物(=ドッグフード)ではないかと疑う人も多いようです。しかしながら正確な統計はないものの、犬のアレルギーのうち食物アレルギーは数パーセントから10~20パーセント程度とも言われます。意外に少ないと思いませんか?

動物病院ではアレルギー診断の一環として低アレルギーの療法食(食物アレルギー用のドッグフード)を処方されることも多いため、愛犬のアレルギーの原因を食べ物(=ドッグフード)だと思ってしまう人が多いのかもしれません。ですが実際に多い皮膚疾患は、細菌・真菌による皮膚病、ノミ・ダニなどの寄生虫、アトピー性皮膚炎で、食物アレルギーは案外少ないようです。

さて、アレルギーが疑われる場合に動物病院でよく行われるアレルギー検査は「血清抗原特異的IgE検査」という血液検査ですが(食品のほかにノミ・ダニやハウスダスト、花粉などもアレルゲンとして検査対象に含まれています)、この検査の結果は率直に言ってそれほど当てにならない割にそれなりの検査費用(一般的に2~3万円程度)がかかりますので、あまりおすすめしない獣医さんも多いようです。最近は「リンパ球反応検査」という新しくて確度の高いタイプの食物アレルギー検査も行われるようになってきましたが、この検査が対象とする食物アレルゲンの種類はあまり多くありません(とはいえ、牛肉や鶏肉、牛乳、小麦といった主要な食物アレルゲンはカバーされています)。

最も確実なのは除去食試験(&食物負荷試験)という検査。1~2ヶ月にわたって食物アレルギー専用のドッグフードを食べさせて皮膚症状が良くなるか、良くなったら逆に元のフードを与えてみて皮膚症状が再発するかどうかを見ます。とてもシンプルで結果が分かりやすい検査ではありますが、除去食試験中は専用のドッグフードの他には水以外何も与えてはいけないという飼い主さんにとって厳しい(十分な理解と努力が必要な)検査です。

冒頭で述べたように、犬の食物アレルギーの特徴は食後すぐに(30分以内)特に口の周りを中心とした顔や耳を痒がるような様子が見られること。もし、牛肉、乳製品、鶏肉、小麦など主要アレルゲンを含むフードで症状が見られる場合は、これらを含まない市販ドッグフードを与えて様子を見てもよいでしょう。

このような症状ではなく、いつも何となく体がかゆそうといった場合は、食物アレルギーとは別の原因があるかもしれません。また、「血液検査の結果で小麦と鶏肉のアレルギーだとわかったから、小麦・鶏肉が入っていないフードを食べさせているけど一向に良くならない」というのは、おそらく食物アレルギー(のみ)が原因の皮膚症状ではない可能性が高いと考えられます。かかりつけの獣医さんに相談するか、別の動物病院でセカンドオピニオンをもらうようにしましょう。

愛犬がアレルギーに強くなる食生活の秘訣

食物アレルギーは仔犬の頃に摂取した母乳や食事が原因となるので、あらかじめ注意するのはなかなか難しいというのが実際です。必ずしもたくさん食べたものがアレルゲンになるということでもなく、少量しか摂取していなくてもアレルゲンになる可能性はありますので、確実な予防は難しいでしょう。ヒトでの研究ですが、母乳で育った子どもの方が粉ミルクで育った子どもよりも牛乳アレルギーになる割合が高かったという研究結果もあり、日ごろたくさん摂取しているタンパク源の方がむしろアレルゲンになりにくいという可能性も示唆されています。

食物アレルギーは成長とともに良くなっていくこともありますが、一度何かのアレルギーになると、その他の食物や環境要因(ノミ、ダニ、ハウスダストなど)のアレルギーになる可能性も高くなることが言われています。このようなアレルギーになりやすい体質を改善するカギは「免疫」。アレルギーは免疫の異常だと説明しましたが、体が持っている免疫力が本来の力を発揮するには「腸内環境」が大きなポイントになります。

実は、体全体の免疫細胞の60%~70%は腸に存在すると言われています。ですから、腸内環境を良好にすることが免疫力の向上につながり、アレルギーに強い体を作ってくれます。ドッグフードは消化が良く、おなかに優しいものを選ぶようにしましょう。

「水分の多いドッグフード」

本来、食べ物には水分がたっぷり含まれているもの。食事の水分には消化吸収を助ける大切な役割がありますが、日ごろドライフードを食べている犬たちのトータルの水分摂取量はウェットフードを食べている犬に比べて少ないのが事実。ドライフードばかりではなくウェットフードも与えるようにしたり、水を飲む工夫を心がけてみてください。

「消化性の良いドッグフード」

カリカリのドライフードには必ずデンプン源となる穀物やイモ類、豆類が主要原材料として使われています。ただ、同じデンプン源と言っても犬にとって消化しやすいもの、しづらいものがあり、たとえば米のデンプンは犬にとって消化しやすいものですが、ジャガイモのデンプンは消化が苦手です。消化の良いドッグフードを選んで、愛犬のおなかに負担をかけないようにしましょう。

「腸内環境に働きかけるドッグフード」

腸内環境に働きかける乳酸菌や腸内の善玉菌のエサとなるオリゴ糖などの機能性原料を配合したドッグフードも増えてきています。また、たとえば大麦は穀物の中では特に水溶性食物繊維が豊富でこれも善玉菌のエサになりますので、大麦が原材料に使われているドッグフードもおすすめ。また、フードのトッピングとしてヨーグルトや納豆を加えるようにするのも良いでしょう。

まとめ
食物アレルギーの犬は以外に少ないのが実際ですが、食事の後に口のまわりをかゆがる様子が見られたら、食物アレルギーの疑いあり。1歳になるまでに発症することが多く、その原因は母犬が食べていたフード(母乳を通して仔犬が摂取する)や、離乳後に食べはじめたドッグフードの原材料に含まれるタンパク質です。血液検査では食物アレルギーの確定診断はできないため、かかりつけ獣医さんに相談の上「除去食試験」という方法で検査をする必要があります。食物アレルギーの予防は難しいですが、アレルギーになりやすい体質を改善するために免疫力を高めるドッグフード選びを心がけましょう。
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【ドッグフード専門家のひとこと評価】
ネットで話題の食物アレルギーに配慮したドッグフード

Butch(ブッチ)
ニュージーランド産の要冷蔵ロールミートタイプ(ソーセージ風)のウェットフード。保存性を優先するドライフードの水分量が10%以下であるのに対し、ブッチの水分量は生肉と同じ約70%。この自然界の食事と同じ水分量が消化吸収性を高めています。赤身肉ベース、チキンベース、フィッシュベースの3種類があるので、愛犬の食物アレルギーの状況に応じて選べます。要冷蔵につき保管に手間が掛かりますが、他にはないタイプのドッグフードで、いま日本国内で手に入る市販フードの中では間違いなく最高レベルの品質と嗜好性だと思います。
ナチュロル
珍しい国産のグレインフリーフード。デンプン源はタピオカとさつまいもですから、小麦やとうもろこし、大豆などの主要な植物性食物アレルゲンを避けることができます。乳酸菌・オリゴ糖配合で腸内環境に配慮されているのもいいですね。脂質7~9%とかなり低脂肪なので、運動量の落ちたシニア犬や太り気味の犬にも向いてます。生肉(牛肉、鶏肉、馬肉、魚)が55%も配合されているのはなかなかの高評価ポイントですが、肉類が複数種類使われているので、お肉のアレルギーの場合には使いづらいのがデメリット。その点が問題なければおすすめできるフードです。
ピッコロ
イギリス産のグレインフリーフード。主要タンパク源は鶏肉とサーモン、主なデンプン源はサツマイモ・ジャガイモ・エンドウ豆ですから、穀物アレルギーや大豆アレルギー、牛肉・乳製品アレルギーに対応可能です。フラクトオリゴ糖が配合されていますので、腸内環境改善も期待できますね。製品ページでは「シニア向け」を強調されていますが、成分バランスを見ると、たんぱく質34%・脂質15%となっていて、むしろ若くて活発な犬に向いていると思います。あっさり系の国産フードが好みではないワンちゃんは試す価値あり。

5月16日 10:46